この度、社団法人・大阪府建築士事務所協会の会長という重要な役目に就くことになりました。会員事務所の繁栄のために、また地域社会に対して専門家がその責任を果たすために、懸命にその役割を力強く果たしたく存じます。
建築基準法の改正に続いて建築士法が改正される本年度は、プロフェッショナルとしての知恵と見識が問われます。建築を確実につくりあげるための高い技術レベルと、高い意識が求められるのです。大阪府建築士事務所協会・平成20年度の事業計画には8つの重点事項、すなわち<①法定団体に関する積極的取り組み、②指定事務所登録機関への取り組み、③会勢拡大活動の全会的な展開、④一般社会に向けた積極的広報・教育活動、⑤建築・耐震相談の充実による社会への貢献、⑥工事監理業務の適正な施行と違反建築の撲滅、⑦環境問題に対する取り組みの強化、⑧ADR事業への対応>が盛り込まれました。この8項目を冷静着実な視点で成果を挙げてゆくことがすべての会員が共有すべき目標であり、これを各支部に所属する会員の皆様とともに知恵を出しあいながら推進してまいりたいと考えております。特に、新しく就任した副会長・各理事の責任ある行動と提案力には信頼を寄せております。加えて、事務局のみなさんのサポートを得て、協会活動の根幹をしっかりと作ってゆきたいと考えます。
私は、建築とは社会が円滑に機能するための基盤であると考えています。そして、建築は人を勇気づけ励ます存在でもあります。そのような広汎な意味を宿す建築というものを適切に計画し、的確に実現させる責任を担うのが建築設計という仕事です。もちろんプロフェッショナルとしての建築設計者は、社会に対してその役割を果たすことに留まらず、社会正義に則って積極的に提言・提案する使命があると感じます。したがって、つねに能力の向上に努め、行動の幅を広げることは、プロフェッショナルの大事な務めです。
言うまでもなく、建築の設計は、さまざまな専門家を適切に束ねることによって遂行されます。統率する者の個性と技量はおおいに尊敬されるべきですが、連携プレーが安定的になされることによってはじめて、社会に対して責任ある成果を生むのではないでしょうか。われわれは建築界にあって、建築士事務所を運営することを通じて、まちがいのないコミュニケーション、次の時代を担う人材の育成について、意を用いるべきだと考えます。
建築基準法と建築士法の改正は、こうした姿勢が一層真摯に遂行されるべきであるというメッセージと言うこともできます。建築士事務所という組織が全うすべき使命を改めて自覚させる機会であったわけですが、こうしたいわば社会観・倫理観というものは、法律があってはじめて育まれるものではありません。民の側に位置する者は、自らを省み成長させることを、建築界全体をより良い姿に導くことを自発的かつ率先しておこなわなければならないのだと考えます。
ところで、私が敬愛する先達に、片岡安(かたおかやすし、1876-1946)という人がいます。片岡は、急激な膨張を遂げる当時の大阪において多くの建築作品を設計する日々のなかで、建築に関わる法規の必要性を実感し、さまざまな提言をおこないました。結果として彼は、東京市区改正条例を大阪と京都に準用させることに成功し、それが1919年の都市計画法・市街地建築物法公布につながりました。東京以外の地で建築団体活動の口火を切ったのも片岡でしたから、片岡、そして大阪は日本の建築が着実に枝葉を広げるための重要な役割を果たしたことになります。まさしく、大阪から日本のスタンダードが発信されたと言うことができるでしょう。
大阪がこのときにリーダーシップを取りえたのは、大阪の持つ先取性であり、多様な知恵であり、大阪の持つ文化発信力であったかと推察します。経済的な地位が相対的に低下したとは言え、私は、大阪にはまだまだ多くの可能性があることを確信しています。だからこそ、大阪府建築士事務所協会は地域社会のなかで一歩前に出たリーダーシップを発揮すべきではないでしょうか。生み出される作品についても、建築設計のプロセスについても、大阪の人々に信頼され尊敬されるプロフェッショナルでありたいものです。
私は、この協会というフィールドのなかに、プロフェッショナルが自信を持って着実に活動できる土壌を育んでゆきたいと考えております。どうかよろしくおねがいいたします。
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