一般社団法人大阪府建築士事務所協会

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・ぶらり大阪”景観”ウォーク

(9)中井神社~田辺の東神(ひがしがみ)~
所在地/大阪府大阪市東住吉区針中野2丁目3番58号

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 中井神社の御祭神は素盞嗚尊です。
創祀・創建年代については記録にありませんが『日本三代実録』(901年)という平安時代の歴史書には摂津の国「田辺東神」と記されており古くからこの地に鎮座されていたことがわかります。この東神に対し西神は田辺の山坂神社です。
 手水の奥に井戸が見え、しめ縄が掛かっているのは御神水です。現在、社殿は改修中です。境内の大木は大阪市の保存樹林に指定されていて、白龍社の御神木(榎)があります。昭和9年の台風で幹の途中から折れて今は根元のみとなっています。この榎には、世に異変のある時必ずや夜中に轟音を発すると言い伝えがあります。拝殿は、入母屋造の瓦葺の建物で、拝殿の後ろにの二間の流造・銅板葺の本殿が鎮座しています。外削の置千木となっていて鰹木(勝男木)が3本乗っています。千木とは、屋根の両端で交差された部材ですが、交差した部材の切断面が垂直に削ったものを外削、水平に削ったものを内削と呼び、外削を“男千木”内削を“女千木”ともいうこともあります。お祀りする神様が男神か女神かで区別しているという説もありますが、神社庁の回答ではそうとも限らないそうです。鰹木は屋根の棟の上で直角に置かれた部材で、もともとは重しの役目をしていたものといわれています。古事記の雄略天皇の条でも「鰹木を上げて舎やかす屋を作る家あり」とあるように形が鰹節に似ていることで、この呼び名が付いたものと思われます。
鰹木に関しては奇数なら男神、偶数なら女神を祀るとの説も聞かれます。鰹木の本数では平安時代に、大社8本、中社6本、小社4本という定めがあったそうですが、現在、伊勢神宮内宮は10本、出雲大社は3本、春日大社は2本となっていて、これもまた俗説のようです。
 現在、中井神社と呼ばれているのは明治の初めに名前が改められたもので以前天王社とも呼ばれていました。改名にあたっては中野村にあり「社前に湧く井戸を汚れなき霊泉として大切にしていた」という伝承から名付けられたようです。
 井戸を大切にしていたことや白龍社があることから水神様を祀る神社でもありますが、天王社とも呼ばれていたことから、いつからかは疫病退散を願い牛頭天王もお祀りされたものと思われます。祇園祭りもこの牛頭天王を祀り疫病退散をお願いし御霊会を執り行ったのが起源とされているそうです。コロナ禍なので、私たちもここで疫病退散・コロナ退散をお願いしました。

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